NPS調査とレビューで顧客のリアルな意見を深堀り顧客満足度の向上は、事業の成長と競争優位性の確保において最も重要な要素の一つです。しかし、満足度を「定量的かつ定性的に把握」する仕組みがなければ、改善施策は効果を持たず、機会損失を生む可能性があります。その中で顧客満足度の指標として広く認知され活用されているNPS調査。顧客が親しい人や家族にそのブランドをどの程度薦めたいかを計測し、数値化するものです。欧米では、このNPS調査が収益や事業の成長率とも強く関係していることからApple、Amazon、Airbnbなど多くの企業が取り入れており、日本企業でも導入する企業が増えています。例えば楽天グループでは、新規利用者数の伸び悩みを受け、顧客との関係性の向上を目指しNPS推進室を新設。顧客理解を深めるための研修が各事業部ごとに行われています。顧客目線での開発や施策が実施されるようになり、2022年には競合企業と比較したRelative NPSで7.9ポイント上回り、1位という結果が出ています。楽天HP|統合報告書 コーポレートレポート2022より作成近年のSNS普及により、個人の口コミや使用感のレビューが商品やブランド、サービスに与える影響はかなり大きくなりました。認知度が低かった商品が、著名人や有名なインフルエンサーに紹介されることでいきなり大きな反響を呼ぶことも少なくありません。誰もが世界中に発信できる時代だからこそ、「他者への推奨度」というのは信頼できる指標といえるでしょう。このテンプレートでは、NPS設問の後に自社サービス・商品についての改善点を自由回答で答えてもらう設問や、インタビューの機会を得るきっかけを作ることでレビューを収集し、さらにユーザーのリアルな意見を深堀りすることを目的としています。この調査を繰り返していくことでユーザー目線の考え方が身につき、自然と顧客満足度の向上へと繋がっていくはずです。次のセクションでは、実際にどのようにこのテンプレートを活用していけばよいかをご紹介します。NPS調査を最大に活かすための設計方法まず、アンケートの1問目に、サービスや商品を友人や同僚に勧めたいかを問います。※弊社サーベイツール「タナカさん」を実施に活用してアンケートを作成しました。画像をクリックするとこのテンプレートがすぐ活用できます。この文章は決まっているわけではありません。調査したい内容に合わせて質問を微調整することができます。例えば、「あなたのような人に、私たち/私たちの製品/私たちのサービスを薦める可能性はどのくらいありますか?」というような問い方は、製品やサービスが特定されているニッチ(マニアック)な顧客を対象としている場合や、調査対象の顧客層が明確である場合に効果的です。 ここでNPSのスコアを導き出すことができます。NPSスコアを導き出す公式は、NPS = 推奨者の割合 - 批判者の割合推奨者とは、9~10点を選んだ回答者。商品やサービスを他者に推薦する可能性が最も高い顧客です。批判者は、0~6点を選択した回答者。商品やサービスを受けた過程で不満を持っている可能性が高く、ネガティブな口コミを広められてしまう恐れもあります。この層へは、次の設問での自由回答の結果が原因を探る鍵となります。中立者とは、7~8点を選んだ回答者。この層の顧客は満足も不満も特に持ってはいないが、商品やサービスの一番のファンではないということです。2つ目の質問では、回答者に自由回答でのフィードバックを求めます。※弊社サーベイツール「タナカさん」を実施に活用してアンケートを作成しました。画像をクリックするとこのテンプレートがすぐ活用できます。このテンプレートでは批判者の意見も収集したいので、改善点を問う文言にしていますが、NPS調査で多く使われているスコアをつけた理由を求める文言でも良いでしょう。否定的なレビューは改善対策において貴重な意見となります。また、9~10点を選択してくれた回答者へはインタビューの機会を設け、よりリアルな意見を聞くことができるようにすると良いでしょう。※弊社サーベイツール「タナカさん」を実施に活用してアンケートを作成しました。画像をクリックするとこのテンプレートがすぐ活用できます。プロモーター(推奨者)を特定し、彼らへアプリストアやウェブサイトにレビューを残してもらうように促すことや、実際にSNSなどでPRしてもらうことにも繋がります。また、年齢や職業などの属性データを得ることでターゲット層が浮かび上がり、さらなるサービス改善やプロダクト開発にも活かすことができます。さて、ここまで設問の設定について説明してきましたが、このアンケートに回答がもらえなければ何も始まりません。アンケートを出すタイミングや頻度、アンケートを送る方法なども重要になります。タイミングアンケートを出すタイミングとしては、商品を購入した後、またはサービスを受けた直後に回答してもらうのが良いでしょう。また、商品やサービスの変更が導入された直後に実施すれば、変更点への評価を知ることができます。あまり頻繁におこなうと、回答者も答えるのが億劫になってしまい、その後のアンケートもスルーされてしまう可能性が高いです。スパムだと認識されてしまわないように注意しましょう。適切な頻度で具体的な頻度として、商品やサービスの利用経験者に対しての顧客体験全体を調査する「リレーショナル調査」の場合、短くても4半期に1回、年に1~2回がお薦めです。また、特定の顧客体験、例えばWeb上での申し込みから購入までの過程や、カスタマーサービス対応などの顧客体験について調査を行う「トランザクショナル調査」の場合は、体験の都度ごとに調査することが望ましいです。タイミングや環境ごとで顧客満足度がどう評価されているのか、細分化して分析することができると、改善点がピンポイントで浮かび上がってきます。このように、調査の対象によって頻度を変えることでさらに顧客のリアルな声を知ることができ、結果の分析や改善点も明確にすることができるでしょう。アンケートの送り方・出し方アンケートを送る方法として、Webサイト訪問時や購入後に出現させる方法や、メールマガジンと一緒に送る方法など、様々なやり方があります。マイクロサーベイを利用してWebサイトにアンケートを表示させることができれば、気軽に答えてもらうことができ回答率も上がるでしょう。また、訪問時に表示させるのか、購入後の画面に表示させるのか等、どのターゲット層へアンケートを収集したいのかを絞ることもできます。タナカさんでは、マイクロサーベイ用のアンケートもノーコードで作成することができ、Webサイトへの埋め込みも簡単に設定することが可能です。メールマガジンで送る方法では、商品のおすすめ情報やサービスの新機能などの情報と一緒にアンケートを送ることができます。ただ、メールマガジンの開封率が悪い場合はあまり回答率は期待できないかもしれません。件名の工夫や送信する時間、お得な情報と共にアンケートに回答するとクーポンがもらえるなど、顧客にとってメリットになる何かがあると良いでしょう。タナカさんではHTMLメールにアンケートの1問目の質問を埋め込むことができるため、メールを開くとすぐにアンケート回答へと促すことができます。HTMLメールにすることで開封率やどのタイミングで開封しているかなどの傾向も分析でき、回答後の分析にも役立ちます。NPS改善で企業成長率を上げるNPS数値と企業成長率には相関性があると記載しましたが、実際にNPSスコアが上がるとどのような作用があるのかをご紹介します。NPSと利益率・企業成長率の相関性NTTコムオンラインが2016年から実施しているNPSベンチマーク調査によると、推奨者(9~10点)は批判者(0点~6点)に比べ、商品やサービスに対してポジティブな意見が多く、年間の購入金額も高いという結果が出ています。例えば金融業界のカスタマーサポート調査においてのNPSを調査したところ、推奨者は継続利用意向が多いこともデータに表れています。金融業界の中で、生命保険分野のNPSトップは、プルデンシャル生命保険株式会社でした。プルデンシャル生命は米経済誌「Forbes」が2024年に発表した「World’s Best Insurance Companies 2024」において、日本から選出された生命保険会社15社の中で1位を獲得。昨年に続き2年連続でのトップ評価となり、特に顧客の満足度や推奨度、カスタマーサービスや契約の透明性が高く評価されたということです。業績に関しても、新規契約件数や基礎利益、純利益等も昨年度を上回り、契約継続率も94.1%という数字をマークしています。NPSスコアを改善させるためには実際にNPSスコアを計測した後、その結果をもとに目標達成のためにはどのように改善していくかが重要になります。1.顧客の意図を理解する推奨者、中立者、批判者、それぞれ点数をつけた意図があるはずです。自由回答の内容を重視し、分析していきましょう。推奨者からは、商品やサービスのどこに価値を見出しているのか、社内の感覚では気づけない、新たな視点を提示してくれるかもしれません。積極的にユーザーインタビューの機会を設け、様々な言葉を引き出すことでよりブランドの価値を高め、競合他社との差別化をはかることへも繋げることができます。中立者の意見は、推奨者にも批判者にも転じる可能性があるため、現状で不足している点を特定できると良いでしょう。質問の内容を「あと少しで満足できた点は?」や、「どの部分が改善されたら高いスコアをつけますか?」などのように工夫し、どのようにしたら推奨者になってもらえるか、どのような点がもう一段階レベルアップが必要なのかを引き出すことで、推奨者へ変えられる道筋が見えてくるでしょう。批判者の意見は、改善が必要な点や課題を明確にするために重要な情報源です。特にどの点に不満を感じているのか、掘り下げていくと良いでしょう。そして、対応が必要なものには早急に改善に取り組むことが大切です。また、改善例を顧客に示すことも重要です。「ネガティブな意見に対応してくれた」ということを顧客に実感してもらうことで、企業に対して良い印象を持つはずです。早めの対応で他社への顧客流出を防ぎましょう。2.顧客体験の向上顧客との接点(カスタマーサポート、営業、アフターサービス)で、一貫して高品質な体験を提供していくことが大事です。また、アンケートで得た顧客データを活用して個々の顧客に合った提案やサポートを行うことができればより良いでしょう。3.社内全体へ共有・意識改革全社員がNPSの重要性を理解し、日常業務の中で顧客満足を意識できることが大切です。顧客対応スキルを向上させるための定期的なトレーニングを実施するのもよい効果が得られるでしょう。また、NPSスコアをチーム内、社内全体へ都度共有していくことで顧客満足度向上への意識がより高まり、さらなる相乗効果が期待できます。4.プロダクトやサービスの品質向上品質の向上やリニューアルは顧客が最も注目している点ではないでしょうか?顧客からのフィードバックをもとに、プロダクトやサービスを定期的に改善することで顧客との信頼関係を築き、長期的なエンゲージメントを目指すことに繋がります。市場の変化やトレンドを反映した新しい価値を提供し、顧客の期待に応えていきましょう。5.NPSスコアの継続的なトラッキング1~4までの改善策を地道に続けながら、定期的にNPSスコアを追跡し、改善点を特定するためのデータ分析をしていきましょう。タナカさんではアンケートの分析を自動で行うことができ、分析結果をすぐにグラフ化することができます。属性別に表示させることも可能です。これらのポイントを押さえ、NPS向上にむけての対策を丁寧に行うことができれば確実に事業の成長や利益向上へと繋がっていきます。NPS調査とユーザーの意見を通して顧客満足度を向上させ、企業の成長を促進させましょう。参考楽天 顧客戦略部 顧客満足を推進する全社KPI設計https://corp.rakuten.co.jp/careers/division/customer_strategy/project/kpi/統合報告書|楽天グループ株式会社https://corp.rakuten.co.jp/investors/documents/annual.html金融業界 カスタマーサポート NPSおすすめランキング | NTTコム オンラインhttps://www.nttcoms.com/service/nps/report/finance_cs/Forbes誌「World's Best Insurance Companies 2024」にて日本の生命保険会社で2年連続NO.1となりましたhttps://www.prudential.co.jp/bestinsurancecompany/