ECサイトで商品を購入した際、注文が完了したことを知らせる画面がありますが、そこで簡単なアンケートを表示させて回答してもらうことで、ユーザーの属性理解を深め、効果的なマーケティングに活用する事ができます。本記事では、その具体的な方法について解説していきます。「顧客へのアンケート」が再度見直される理由と背景オンラインで商品を販売するEC企業や、ここ数年勢いがあるD2Cの企業の成長を支えてきた柱の一つが、細かい広告ターゲティングを可能とするFacebookやGoogleなどのプラットフォーマーでした。しかし、2021年にApple社のiOSのポリシー変更がなされた結果、多くの広告プラットフォーマーに影響を与え、EC・D2C企業の広告のパフォーマンスが低下しました。2024年にはGoogle社もトラッキングの規制を強化するとされており、サードパーティデータを使用した広告から顧客を獲得するという方法の精度が低くなり、ECサイトを運営する多くの会社が影響を受けることが予想されています。この「規制によってデータが取れなくなった」という問題を解決するために、今注目されているのが「ゼロパーティデータ」を取得して活用する方法です。では、ゼロパーティデータとは一体何なのでしょうか。ここで簡単に、データの種類についてもう一度おさらいしておきましょう。ゼロパーティーデータに関してはこちらの記事で解説していますので、詳しくはこちらをご参照ください。https://service.tnksn.com/blog/post/zeropartydataこちらの表のように、データは4つの種類に分けることができますが、先述したように、トラッキングの規制で自社保有のファーストパーティデータ以外(セカンドやサードパーティーデータ)は、制限されていく流れにあります。つまり、規制によって、ターゲットとする層へ精度の高い広告を出すことが難しくなってきているのです。そこで注目されているのが、自分たちで顧客へ丁寧にアンケートなどを実施しながら正確なデータを集めていくこと。ユーザーに以下のような簡易的なアンケート(マイクロサーベイ)に回答してもらうことで、趣味や嗜好、属性などを深く理解し、販売促進に活かすことができます。マイクロサーベイを使えば購入した顧客の事を簡単に深く理解できるマイクロサーベイを活用し、ECサイト上で顧客に簡単な質問をすることで、顧客の様々なニーズを理解することができます。例えば、プレゼントの商品を購入した顧客に対して、誰のためにその商品を購入したのかを尋ねる簡単なサーベイを実施することで、友人、恋人、家族、親戚など、贈り先の関係性を把握することが可能です。もし、多くの購入者が恋人向けにプレゼントを購入している場合、その商品の魅力や広告クリエイティブ、画像、メルマガなどを適切に工夫することで、コンバージョンを改善できるかもしれません。ここで、実際に購入者に簡単なマイクロサーベイを実施した事例をご紹介します。Just For Fun株式会社は、人力車の冒険を通じて大きな注目を集めている会社ですが、特にSNSを中心に熱烈な支持を受けており、ECサイトではファン向けのグッズなどを販売しています。 そのECサイトの商品購入の直後の画面で簡単なマイクロサーベイを実施しました。実際の商品購入後の注文確認画面はこちらです。実施したサーベイは、たった3問の質問で、10秒で回答できるシンプルなもの。そして、今回、商品を購入してくれたファンに尋ねたのは、「購入する際に重視している点」、「価格変更についての認知」、「サイトの改善点」の3つです。設問1で得られた回答結果は以下のとおりです。サーベイを実施する前は、Just For Funの「商品コンセプト」に共感してもらい、グッズを購入しているユーザー(ファン)が多いと予想していたため、「商品コンセプト」が最も重視されていると考えていました。しかし、サーベイの結果から、パーカーやTシャツなど普段身につける(または着る)ものは、デザイン性が最も重要な要素であることが分かりました。このことから、コンセプトを全面に押す販売スタイルを、デザイン性を意識したグッズ販売に力を入れるものへと変更。また、チーム全体がグッズを企画する段階からデザイン性を改めて意識するようになりました。さらに、商品のクリエイティブ画像も、実際に身につけている画像を大幅に増やしてユーザーがイメージしやすいように変更しました。変更後のECサイトページはこちらです。設問2では、商品の送料の価格を変更したことに関する認知度を確認するため、ユーザーにアンケート調査を行いました。その結果、回答者の約半数が送料価格の変更に気付いていないことが明らかになりました。Just For Funの事業は既存のファンのサポートに大きく依存しています。それにも関わらず、しっかりとファンに情報が伝わっておらず、コミュニケーションが不十分であることが判明しました。この課題をプロダクトチームと共有し、すぐに改善すべき優先事項として取り組みました。設問3では「サイトの改善点」に関する質問として自由に回答して頂きました。実際に以下のような様々な意見があり、大きく分けて「購入前の検討」と「商品ラインナップ」に関する意見としてグルーピング化する事ができました。購入前の検討に関するユーザーの声"実物を見ていない商品の場合、色味が分かりにくいので、大手ネットショップのように色ごとに実際のものと近い写真も付け加えて頂けると、届いた時にギャップが少なくありがたいです!""新商品の情報をもう少し詳しく知りたかったです。""イメージ画像で良いのでカレンダーの中身載せて欲しかったですね。卓上なら置いてみた画像もあると嬉しいです。ファンなんで購入はすると思いますが""もう少しサイズ感がわかるようにして欲しいです。""代引き等支払い方法を選びたい""通販のご担当者が見えるように感じるので、信用度が高いです。"商品拡大に関するユーザーの声"キッズサイズの商品展開を期待してます!""スポーツウェアの展開を楽しみにしてます!""売り切れ商品の再販をして欲しいです""煩悩トレーナーのMサイズが欲しかったです…再販ありますか??""カラー展開が増えれば良いかなーと思います。"これらの意見を受け、商品画像をイメージしてもらいやすいように工夫したり、サイズや色に関する情報を分かりやすく見直しました。また、商品のラインナップに関する事は企画チームのアジェンダに入れ、商品開発のアイディアとして検討する事ができました。商品の認知経路を理解し広告リソースの分配を最適化EC企業の運営者は、Instagram、Facebook、Twitter、TikTok、Google検索など複数のチャネルがある中で、「どこに露出を増やすと効率的に見込み顧客にリーチできるのか」を日々分析しているかと思います。また、ユーザーの購入ログから属性を理解したり、アナリティクスの行動データを活用してユーザーの特性を推測している事でしょう。マイクロサーベイを使うと、そのようなチャネルの分析やユーザーの理解を簡単に行うことできます。例えば、商品の購入完了ページにマイクロサーベイを設置し、「どのチャネルで商品を認知したか」というシンプルな質問をすることで、認知経路を把握することができます。Just For Funで実施した内容を基に解説していきます。現状、Just For Funがファンにリーチするチャネルには以下の7つのチャネルがあります。■Just For Funの公式アカウント・Instagram・TikTok・Twitter■ガンプ鈴木の個人アカウント・Instagram・TikTok・Twitter■オフライン交流会今回は、ECサイトの商品購入完了ページにて、どこでその商品を初めて知ったのかについて、シンプルに1問だけ質問してみました。サーベイの結果は下のグラフのように、210人中120人がJust For Funの代表であるガンプ鈴木の個人のInstagramで商品を認知したと回答しました。また、Just For Funの公式よりもガンプ鈴木の個人アカウントの方がアパレルブランドの認知力が高く、TikTokよりもInstagaramの方が認知力が高いという事が判明したのです。このことから、販売数を増やすにはガンプ鈴木の個人アカウントのInstagaramで商品を告知するのがいいのではないかと考えましたが、広告チームで様々なデーターを検証した結果、ガンプ鈴木個人のInstagramで販促を強化しようとするとファンのエンゲージメントが悪くなるという事も判明。したがって、ガンプ鈴木の個人のアカウントでは日々の活動の情報発信をメインとし、Just For Funの公式サイトでグッズの販促やスポンサーの募集をメインとする事で棲み分けを行う、という結論に至ったのです。サーベイを実施したことで、広告や宣伝のリソースを再度見直し、現状ではまだ認知が足りていないJust For Funの公式サイトでグッズの販促やスポンサーの募集に力を入れていくという新しい方針を立てることができました。まとめ:ほんの数回、数問のサーベイで多くの示唆が得られる今回の事例では、購入する際に重視している点価格変更についての認知サイトの改善点商品の認知経路という4つの点について、たった2回のサーベイを実施することで多くの示唆を得ることができました。その結果、サーベイを実施する前は推測に基づいた施策であったものを、明確になったポイントに対する適切な施策へとすることができたのです。タナカさんのマイクロサーベイは、導入した日からすぐ使えるテンプレートが豊富に揃っています。サイトの訪問ユーザーの理解を深めるため、ぜひ活用してください。